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ハレの日騒動とリスクマネジメント
2018.02.23

 

■ 1.「ハレの日」騒動

少し前になりますが、先月、成人式の晴れ着をめぐる騒動がありました。

横浜市等の成人式の着付け会場に届くはずの振袖が届かず、多くの新成人が晴れ着を着ることができずに大きな混乱が生じたというものです。人生の記念すべき晴れの日に、楽しみにしていた振袖を着ることができずに混乱の中涙する新成人やその親御さんの姿が何度も報道され、大きな衝撃を受けました。

その後に被害額は億円の単位となり、大量に振袖がネットオークションに出品されているという報道もあり、計画的な詐欺事件かとも思いましたが、その後事件の当事者の「ハレの日」の社長が謝罪会見を行い、詐欺の意図はなく、資金繰りがつかず、営業を投げ出したのが要因ということがわかりました。

少なくとも預けていた振袖は転売されているわけではなく、順次手許に返却されるということで、最悪の事態ではなかったようです。

■ 2.振り込む前にリスクを想定していたか

今回の騒動は、「ハレの日」という会社に全面的に責任があるのは確かです。しかし、購入する側も高額の買い物をする際にもう少し「リスク」を考える必要はなかったでしょうか。

報道によると、「ハレの日」では、2年後の成人式の晴れ着についても受注を行い、そして入金を強烈に促しており、今回戻ってこない振袖の代金の一部は、来年以降の振袖の代金でした。

少し落ち着いて常識的に考えてみれば、2年後の振袖の代金をすぐに振り込まなければいけない状況は、非常に違和感があるということに気づくことができたのではないでしょうか。

そこまで思いが及ばなかったとしても、「お金を振り込み、商品の到着が2年後になる」ということは、その間に会社が倒産すれば当然そのお金は返ってこないという「リスク」をきちんと認識をしたうえで、入金をしたのでしょうか。

■ 3.リスクに背を向ける日本人

そのようなリスクを想定していた方は恐らくほとんどいなかったと思います。振袖という特別のものを購入するということでリスク感度が鈍っていたのかもしれませんが、日本人は、もともと「リスクを見ない」「リスクに背を向ける」という傾向にあるといわれています。日本人は文化的に「相互監視と相互規制の仕組み」があり、変なことをすればその社会で生きていけなくなるという村八分的感覚で信頼関係を気づいているという背景があるといわれています。(「心でっかちな日本人」 山岸俊男著)文書化されたルールや契約、モニタリングといった明確な根拠がなくても「変なことはしないよね。」という暗黙のルールがあり、その中にいる人同士であれば、盲目的に信じてしまうということになります。

例えば最近生じている「品質データの改ざん」についても、納入先の企業は納入元の検査結果を全面的に信じており、例えば検品の際にサンプルで検品のテストをする、といったことは行っていなかったようです。長年の信頼している取引先だから大丈夫といったことで、取引相手が不正を行うリスクを識別しないまま盲目的に信頼してしまっていたからでしょう。

■ 4.リスクマネジメントの考え方

すべての事柄に対していつもリスクを検討しているのは非効率ですから、重要なリスクを抱えるという時、個人でいえば例えば住宅を購入するときには慎重に考慮する必要があります。例えば値段だけではなく、災害やメンテナンス、周辺の環境等様々なリスクを考えて決断をしていくことが必要なはずです。水害が起きやすい地域であれば、同条件の他の物件と比較して値段は安いはずですが、そのリスクを認識したうえで、対応をしていくことになります。対応とは、例えば保険を掛ける(リスクの共有)、排水溝を整備する(リスクの軽減)、購入をあきらめる(リスク回避)ということになります。

ビジネスであれば、例えば買収をする際には、開示されている財務数値だけでなく、法令や内部統制、ビジネスの将来性、従業員の構成等様々な観点からできる限り網羅的にリスクを識別し、その識別したリスクの大きさや対応方法を考慮した上でリスクを取るか取らないかといったことを決断していくことになるわけです。買収後に思わぬリスクが顕在化して十分シナジー効果がでないのは、この事前準備が不十分でリスクを十分識別できていないことも多いと思われます。

新成人がこれから足を踏み入れるビジネスの世界は、健全な懐疑心を持ちながら、時にはリスクを果断に取りながら物事を進めていかなければならない世界です。中には、スキがあればつけこもうとする人もたくさんいます。また、対処すべき相手は同じ文化で育った日本人だけでなく、様々な背景を持つグローバルな世界が相手です。自身がこれから行う行動には、どのようなリスクがあるのか、何が最大の損失なのか、その最大の損失は避けるべきレベルにあるのか、そのようなことを考えながら前に進んでいかなければなりません。

今回の「ハレの日」の騒動は、そのような世界が待っていることをしっかり認識するいい機会と思い、力強い大人になって頂きたいと思います。

また十分大人の私たちもリスク感度を高めていかないといけないですね。