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東京医科大学の点数操作と女性活躍のホンネ
2018.09.15

今年の夏は本当に暑かったですね。「喉元過ぎれば熱さを忘れる」で、何とか乗り切ったということに安堵してしまっています。「〇年に1回の猛暑」「ゲリラ豪雨や線状降水帯による豪雨も含めて、「異常」と片付けるのではなく、これが毎年起こることを前提に備えておかないといけないのかもしれないですね。

さて、今日は女性の受験者に不利になるような得点調整を行っていたという東京医科大学の問題から女性活躍のホンネについて考えていきたいと思います。

1.点数操作と女性活躍のホンネ

「女性は年齢を重ねると医師としてのアクティビティが下がる」(学校法人東京医科大学内部調査委員会の調査報告書)などということで、女性の受験者に対して不利となるような得点の調整を行っていた東京医科大学の不正入試問題。この報道を聞いた時、みなさんはどのように感じられたでしょうか。

上記の調査報告書では、「女性の受験生をただ女性だからという理由だけで差別してきたことに関しては、社会が女性の活躍を促進するべく様々な方策を施していることに真っ向から反抗するものであって、断じて許されるべきではない。」とばっさりと言い切っています。また様々な報道をみても「女性がやめなくて済むような勤務形態とか働き方とかを真剣に考える方が先で、それで入試の点数を操作するなんて許されるべきではない。」という論調が大半だったかと思います。

確かにおっしゃる通り。私自身も一女性としてこのような調整が入試で行われるということは本当に腹立たしいと感じます。ただ、東京医科大学をバッシングしておしまいにしていいお話ではないように思います。むしろ、バッシング報道が色々な議論の機会を奪っているようにも思えてきます。

医師向けの人材紹介エムステージが、今回の東京医科大学の対応について女性医師を中心にアンケートしたところ、肯定的な回答(「理解できる」「ある程度理解できる」)と回答した医師が65%ということだったとのことでした。男性医師ではなく女性医師がこのように答えているということは興味深いことです。「現状では仕方がないというあきらめの境地」とか、「産休や育児休暇で抜けた穴をカバーしている未婚の女性医師が複雑な環境を吐露している」とした分析がされています。産休・育児休暇でお休みをとる人、復帰後の時短勤務のカバーをしている未婚の方や男性社員が持つ割を食ったような感情は何も医師に限ったことではなくよくあるお話です。ただ、このようなホンネは口に出すことはできない空気があります。

一方でお休みや時短勤務をしている側としては子育てで必死です。なかなか自分の仕事をカバーしてくれている上司、同僚、後輩に感謝や配慮するまでの余裕がない場合も多いかと思います。いきおい「こんなに頑張っている」といった自己主張をしてしまうケースもあるかと思います。

支える人と支えられる人、両者の溝は深まるばかりです。「何か報われていない感じ」や「何か損をしている感じ」といった感情が渦巻いている職場も結構あるのではないでしょうか。

2. 日本人はもっとも会社を信用していない?

性別に関係はないですが、米国のPR会社Edelmanの調査では、世界28カ国中、日本人は、「世界で、最も自分の働く会社を信用していない国民」という結果がでたそうです。「自分の会社を信用するか」と言う問いに対して「信用する」と答えた割合はわずか40%で調査した中で最低で、米国(64%)、イギリス(57%)、中国(79%)、インド(83%)よりはるかに低く、ロシア(48%)よりも低いそうです。

その要因の仮説として筆頭で挙げられているのが、「長時間労働」です。(東洋経済オンライン 2016年9月4日号)つまり、女性活躍促進を妨げている長時間労働は、女性の活躍を阻んでいるだけではなく、性別に限らず働く人のモチベーションを下げ、会社と個人の信頼関係を壊している残念な結果のようです。

最近は、「働き方改革」で長時間労働を見直す動きも出てきています。この動きの中で、RPAやAI等のテクノロジも積極的に活用し、生産性を高めていくことは有力な解決策の一つです。「必要なのは技術を正しく使うことだ。急速に普及するロボットや人工知能(AI)を企業ごとにふさわしいやり方で取り入れ、効果を検証しながら改善する。ITの導入で機械ができることと人が担う業務を選別し、テレワークも活用したい。(中略)姿が見えないからさぼっているというのは過去の発想だ」(日本経済新聞2018年9月4日号 サントリーHD新浪氏の記事より)ということです。これまでの仕事について、「人間がやるか」「人間がやらなくていいのか」といった新たな目線で整理すればこれまでにない形で長時間労働から解放されるようになるかもしれません。

また、日本航空も新しいシステムを導入してAIを活用して料金設定を行ったところ、収益が大幅に改善したという記事もありました。(日本経済新聞2018年9月3日)。この料金設定は長年の勘と経験でベテランが実施していた業務ということですから、長年の勘と経験がAIまたはAIとデータベースという新たな資産となって、会社の収益に貢献したということでしょう。

一方で、「医師はAIの導入に消極的な人が多い。」というお話をあるシステム会社の方からお聞きしました。「今やっていることが変わることに対する抵抗感」があるそうです。確かに仕事のやり方を変えていくということは簡単な話ではないかもしれませんが、そうしないと今の人手不足と長時間労働は解消されません。それは性別に限らず不幸な働き方であることは前述のアンケートからも明らかです。

3.「できる」と期待される方が本当にできる

ITといったテクノロジだけでなく、人間同士の信頼関係も女性活躍のためには必要です。私自身の経験からも、色々な研究からも、女性は自分の能力を過小評価し、物事に対して保守的に考え「できない」と予防線を張ってしまう事が多いようです。(逆に男性は、自分の能力を過大評価し、「自分はできる」というアピールをすることが多いそうです。)
女性に何かチャレンジの機会を与えようとしても、「できない」といった否定的なレスポンスを受けてしまうと、チャレンジの機会を設けようとした上司側としては、あまりよい気持ちがしないものです。特に上司側は男性であることが多いため、そのレスポンスを理解できず、物足りなく思ってしまう気持ちはなおさらだと思います。ただ、このようなレスポンスが性差に基づく「癖」みたいなものだと知っていたら、少し心持ちは変わってくるのではないでしょうか。「男女分け隔て
なく」といいますが、生物学的に色々な違いがあるわけです。その違いを一つの個性と考え、そのような違いを知っておくだけでずいぶんコミュニケーションの仕方も変わってくると思います。

また、「上司の期待に合わせて部下の成績が上下する」といった実証的な実験結果や、治療にあたる医療関係者が、「この患者は治る」と期待している場合の方がそうでない場合に比べて治療の効果が格段と上がるといった研究結果があるそうです。(動機付ける力 モチベーションの理論と実践 DIAMOND HBR編集部)

「個性を知り、信じて任せる」これも女性活躍に関わらず、幸せな会社への第一歩かもしれません。

4.ちなみに公認会計士試験は?

東京医科大学に入試の問題から色々述べてきました。また、文部科学省が全国の医学部の合格率を調査し、男女の合格率に差異がある場合、その差異の理由が合理的なものかどうか調査する、といった報道もありました。今後、医学部についてはこのような調整が行われないようになっていくのでしょう。
ところで、公認会計士試験はまさかそのような調整はされていまいと公認会計士試験の男女別の合格率を調べてみましたが、男女別の受験者数が公開されておらず、男女別の合格率は検証できませんでした。男女別の合格率はどうなっているのやら。(ちなみに司法試験は男女別受験者と合格者が公表されていました。)
試験での合格率はどうであれ、公認会計士の会員登録の女性比率は、12%程度とお寒い状況です。我々の業界の女性活躍促進もまだまだ道は遠いようです。