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DeNAのキュレーション事業に関する「調査報告書」について
2017.03.26

DeNAのキュレーション事業に関する第三者委員会の調査報告書が公表されました。

当該報告書は、DeNAがサービス提供していたしていたサイトのうち、医療・美容系の情報を取り扱っていたWELQに「肩こりは霊のせい」といったような著しく不適切な記事が掲載されていたことをきっかけに、そもそもキュレーション事業で運営していたサービス全体の著作権法等の法令違反や、内容自体が作成・公開されていたことが発覚しました。その詳細な事実関係やその原因追及のための組成された弁護士を中心とした第三者による委員会の報告書となります。

報告書全体を読んで、問題が非常にわかりやすくまとめらており、また単なる「コンプライアンス意識」のみを強調するのではなく、ビジネス上の意思決定を尊重しつつ、その中で今回何が足りなかったのかを大局的な観点と個別のチェック体制両方を冷静に分析されているとてもいい報告書なのではないかという感想を持ちました。

特に印象的だった記載をご紹介していきたいます。

■事業リスクへの取り組み方

『そもそも「キュレーション事業は何か」という同事業の基本的な「型」に対する共通認識を持たない限り、DeNAの目指すべきキュレーション事業についての議論や、それを達成するための障壁やリスクへの対応策の分析が意義あるものになろうはずがない。ところが当委員会が把握する限り、DeNA社内においてこうした基本的な「型」の部分についてすら、根源的な議論がなされた形跡が見当たらず、DeNAは「そもそもキュレーション事業とは何か」といった問いに対する明確な答えを持ち合わせないまま、同事業への参入に突き進んでいたような印象を受ける。』(調査報告書より抜粋)

キュレーション事業は、DeNAの新しい収益の柱として掲げていた新事業でした。ただ、その事業そのものに対して持つ認識が、社内でもバラバラであり、そのためにその事業のリスクの把握、分析、関連する法令、リスク回避の方法や低減の対応が十分にできなかったとのことです。なぜ、このようなことが生じてしまったのでしょうか。第三者委員会では、「焦燥感があったのではないか」と分析しています。

確かに、「永久ベンチャー」というDeNAの理念自体はすばらしく、失敗を恐れず果敢にリスクに挑んで成長をしていくことは「稼ぐ力を取り戻す」ために必要なことだということはガバナンスコードでも言われている事になります。ただ、リスクに果敢に挑んでいくためには、そのリスクを理解し、適切に対応をしていく必要があります。リスクに果敢にチャレンジするということは、リスクから目を背けることではないということです。もちろん、新しい事業であればリスクの全体像がわからないこともあるでしょう。その場合も事業を進めて行きながら、新しく判明した状況を反映して再度リスクを見直すといったモニタリングを実施していかなければなりません。

 

どれもリスクマネジメントの基本的な考え方となりますが、この基本的な考え方を成長している事業にも例外なく適用していくことが困難だということが今回よくわかりました。このようなことが適切に実施されているかどうかを取締役会で議論が行われることが今後リスクを果敢にとって成長をしていくためのガバナンスを効かせるということになるのでしょう。

 

■企業倫理とコンプライアンス

 

『倫理的な観点やコストとの見合いでビジネスとして成り立ちにくい領域が存在する』(調査報告書より抜粋)

 

倫理・コンプライアンスだけでは利益は稼げないけれど軽視するわけにはいかないのです。「大企業病」という言葉がありますが、「大企業」となったからには、それによせられる信頼を裏切るようなことはしていけないのです。倫理やコンプライアンスはその信頼のベースとなるものです。「いい大企業病」の部分は大企業然としていなければならなかったと思います。

 

一方で、「悪い大企業病」は、無関心や責任の存在の曖昧さ、形式重視、コミュニケーション不足といったものでしょう。DeNAの調査報告書ではこちらの部分にしっかりかかっていたように思います。

 

買収前のDDで、「著作権法違反」の可能性が指摘されていましたが、その後のそのリスクがどのように対処されているか、同様のリスクが他のサイトで生じていないかをDDの担当部門から法務部門に引き継がれることはなかったようです。また、法務部門は依頼されたものの法務チェックはしていましたが、法務部門から積極的に動いて他のサイトをチェックはしていませんでした。

 

内部監査部門も著作権法違反の可能性について指摘はしていましたが、その後のフォローアップ監査を行っていませんでした。また、この指摘が行われた監査報告書が監査役会や取締役会で議論が行われることはありませんでした。

 

著作権法違反や記事の内容そのものに対するクレームは、カスタマーサービス部門から事業推進部に報告されていましたが、これが上席者に報告されることはなく、リスク情報が迅速に吸い上げる仕組にはなっていませんした。このクレーム情報は例えば内部監査部門や法務部も注目すべき情報だと思いますが、ここを閲覧して何等かのリスク評価に利用していたかどうかは不明です。

 

各部門がリスク情報に対してコミュニケーションを密にして連携して取り組み、大きなリスクにつながる情報の有無を議論するようなことができていなかったように思えます。マイナスの情報ほど早く共有するといった意識改革を今後実施していくとになるのでしょう。マイナスの情報が早く伝える意識というのは、一朝一夕にできるものではありません。マイナスの情報を上げて叱責される場合、もう2度とマイナスの情報が上がってくることはありません。

 

■調査報告書はとても有効な参考書

 

調査報告書は、その会社の不正・不祥事が生じた背景や要因を分析するものですが、そこでの分析や対応策は不正・不祥事を起こした会社でなくとも大変参考になるものです。調査報告書で指摘されているような状態に自社がなっていないかどうか改めて見直しをしてみてはいかがでしょうか。